CDRとは? -具体的施策提言-

CDRを通して、具体的な施策提言がなされることで、様々な施策の提言に繋がります。チャイルドデスレビュー(CDR)により、背景にネグレクトの存在が確認された、事故死とされていた外因死の模擬事例を提示します。
(キャロル・ジェニー著 子ども虐待とネクレクト ~診断・治療のためのエビデンス~ 第62章:チャイルドデスレビューより引用)

多機関連携でのCDRが実施され、年次報告書が作られるようになると、地域住民が地域におけるピットホールを把握し、このような施策が実際に実施されたのかを、把握できるようになります。

虐待を早期に同定するための、情報共有の在り方に関して #1

問題点

同胞がいなかったため、マルトリートメントによる死亡が疑われた事例であったが、児童相談所への通告はなされなかった。

施策提言

同胞の有無にかかわらず、児童相談所への通告を義務付けるように、州法および州の政策を改正する。

具体的に実施された施策

提言から60日以内に、州法に提言が採用され、州の政策がただちに変更された。

虐待を早期に同定するための、情報共有の在り方に関して #2

問題点

フリーダイヤルでの通告ホットラインで連絡ができなかったため、通告義務者(法執行機関、医師など)による児童虐待およびネグレクトの通告は、最長1週間の遅れが当たり前になっていた。

施策提言

通告ホットラインシステムを整備し、通告義務者に、養育過誤が疑われるものを通告するための方法/電話回線を用意する。

具体的に実施された施策

電話回線数が2倍になり、人員を増やし、ホットライン従事者の訓練を実施した。

児童相談所の調査に関して #1

問題点

第三者からの聴取内容(「親は危害を与えるつもりはなかった」、「犯意はなかった」、「死亡は事故によるものである」、「親はすでに十分苦しんでいる」など)を根拠に、児童相談所はネグレクトによる死亡の可能性のある事例に対し、調査を行っていなかった。調査がなされなかった事例の中には、以前に重度のネグレクトであると認定された事例や、重度のネグレクトの十分な証拠がある事例も多数含まれていた。

施策提言

児童相談所内に、マルトリートメントによる死亡の可能性のあるとされた全ての死亡事例に対し、そのような事例への対応や調査を行うためのトレーニングを受けた、24時間365日対応の特別調査チームを置く。

具体的に実施された施策

提言にある特別調査チームが新設され、トレーニングが開始された。現在では、警察や検察などと共同で、多機関連携による包括的な調査が実施されている。

児童相談所の調査に関して #2

問題点

児童相談所に通告されたマルトリートメントによる死亡が疑われる事例が、児の両親の居場所が特定しえなかったという理由で、調査がされなかったり、調査が打ち切られたりしていた。

施策提言

政策を変更し、単に親の居場所がわからないという理由で調査を打ち切ることを禁止し、州の枠を超え、警察と協働するなど鋭意努力して、親の居場所を突き止めるよう求める。

具体的に実施された施策

CDR調査のカテゴリーに、親の居場所が突き止められなかった場合の対処法を新しく加えるとともに、多機関連携チームが児童相談所と連携して親の居場所を突き止める責任を負うことが明記された。

警察による捜査に関して #1

問題点

乳児の不詳死事例に対して、警察が捜査を行っておらず、乳児の養育者の犯罪歴も調べていなかった。確認さえしていれば、養育者が過去にこの乳児に対し身体的虐待を行っていた既往が速やかに判明していたはずであった。

施策提言

事故死であれ不詳死であれ、小児の死亡時には警察が必ず犯罪歴を確認することを標準業務とする必要がある。

具体的に実施された施策

全ての小児死亡事例を調査するための計画策定のために、多機関連携調査チームが召集された。現在では、全ての事故事例と不詳死事例に対し、養育者の犯罪歴の確認が実施されている。

警察による捜査に関して #2

問題点

目撃者の子どもに対して、しかるべき面接技法による司法面接が実施されていなかった。

施策提言

目撃者が子どものケースにおいて、適当とされるプロトコールの司法面接を実施することを、標準業務とする。

具体的に実施された施策

子どもの死亡の調査を担当する、全ての警察官、検視官、児童相談所の福祉司などを対象とし、系統的なトレーニングを提供した。

検視官/監察医(法医学者)による調査に関して #1

問題点

ほぼ同様の状況で死亡した事例の死因や死亡態様の判断が、監察医(法医学者)により大きく異なっていた。

施策提言

全ての小児死亡事例に対して事案検討会実施し、死因や死亡態様についての見解を一致させていく。

具体的に実施された施策

監察医(法医学者)は現在、全ての小児死亡事例について事案検討会を開催している。このほか、取扱い件数の需要に見合うように、監察医(法医学者)のポストを増やしている。

検視官/監察医(法医学者)による調査に関して #2

問題点

死亡児の親が加害行為を自白した事例であっても、検視官/監察医に照会されず、臨床医が死亡診断書を記載していた。

施策提言

主任監察医(法医学者)により、病院小児科医を対象に、死亡診断書/死体検案書を記載する上での法的要件についてトレーニングを実施する必要がある。

具体的に実施された施策

現在は、病院の精度管理部門が、内因死以外の死亡事例全件について、すみやかに検視官事務局に調査を依頼するように各医師に求めており、病院の医師がその過程を踏まずに死亡診断書を書くことは認められていない。

児童相談所による情報の収集 #1

問題点

死亡児に対する児童相談所による調査は包括的に行われたとは言えない状態で、入手しえた全ての機関の記録を確認し、他機関の情報を加えても、事実認定をするうえでの証拠が不十分であった。

施策提言

調査をする必要のある事例の、明確な選別標準を設定し、その基準に該当する死亡事例は全例、十分な調査がなされなければ、調査を終結させてはならない。

具体的に実施された施策

選別基準は文書化され、該当事例に対しての調査が不十分な場合に調査を終結させてはならない旨が、正式な施策となった。

児童相談所の提供するサービスに関して #1

問題点

特に親の薬物乱用の問題や精神疾患の問題に対し、何らのサービスも提供されていないか、提供されていても有効なサービスとは言えない状況であった。また、サービスを提供することが必要な旨も、事例の記録には記載されていなかった。

施策提言

必要なサービスを同定し、提供するまでの追跡システムを構築し、サービス提供しえない場合にはその障壁を同定する。また、それらの情報を、裁判所への申立て文書には必ず盛り込む。

具体的に実施された施策

ニーズに見合うように予算増額がなされ、児童相談所の心理職が増員された。また新たなコンピューター追跡システムが導入された。

児童相談所の提供するサービスに関して #2

問題点

児童相談所が事例の調査を行い、母親に有責性があると判断しても、生存している同胞がいない場合には、例えその母親が妊娠していたとしても、調査を終結させていた。

施策提言

児童相談所は、有責性のある母親が妊娠している場合、生まれる予定の新生児の安全が担保されるまで、調査を終結してはならない。

具体的に実施された施策

有責性のある母親が妊娠している場合、生まれる予定の新生児の安全が担保されるまで、調査を終結しないように、施策が変更された。

民事裁判および刑事裁判の判断に関して #1

問題点

検察は、ほかに目撃者がいない場合、加害者の自白がなければマルトリートメントによる死亡事案を起訴することはなかった。

施策提言

多機関連携調査チームが検察官と協働し、起訴に持ち込めるだけの証拠を収集しうる、質の高い調査をする必要がある。

具体的に実施された施策

事故事例と不詳死事例の検証を行うために、検察官を議長とする、多機関連携チームの召集がなされた。

民事裁判および刑事裁判の判断に関して #2

問題点

父親からの身体的虐待により子どもが死亡した。本児と父親との再統合を認めないように、児童相談所が家庭裁判所に申立てを行っていたが、家庭裁判所がその申立てを棄却していた。

施策提言

子どもの健康と安全に大きな悪影響を及ぼした判決を下した裁判官に対し、その情報をフィードバックし、相互評価(peer review)する仕組みを構築する。

具体的に実施された施策

現在、相互評価(peer review)の仕組みを構築中である。

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